Kyosuke Tsujimoto

丁寧に暮らす

アイデアを捨てる勇気――創作における“引き算”の思考法

皆さん八月がまもなく終わりますが、いかがお過ごしでしょうか。本日は天気も良く、残暑が続く八月の終わりといったところですね。Kyosuke Tsujimotoブログの更新を再開すると決めてあれこれ考えていると、色んな考えが出てきて沢山記事を書いてしまいます。この熱が向こう何年か続いてくれる事を願いつつ、しっかりと記事を書いていきたいと思います。

さて、今回は「アイデアを捨てる勇気」というタイトルでお送りしたいと思います。「アイデアを捨てるの?」と驚いた方もいらっしゃるかもしれません。ですが、間違いなく、アイデアを捨てます。過去私も何度かアイデアを捨ててきました。新作の小説を書きあげる際に私はよくアイデアを捨てます。「勿体ない」という声が聞こえてきたような気がしますが、私も駆け出しの頃は勿体ないと思っていましたが、今は違います。アイデアは捨てても問題ないと思っています。

一般的に蔓延る「足し算」の美学

私の生活でのテーマではあるのですが、私はモノを持たないミニマリスト・ミニマリズムを推奨しています。足りないものは足していけばいいの逆を往きます。足りないなと感じればどうやったら充足感を得られるか──今私が持っている手札でどれが一番充足感があるかを考えるのです。

そうすれば、少ない刺激で存分に楽しめる質素倹約の生活が成り立ちます。そして時たま行く旅行や外食をより一層楽しむ事が出来るといった算段です。お財布に優しく、心にも温かいもので満たされるような感覚になるのではないでしょうか。

そんな引き算の概念をアイデアにも持ちましょうね、というのが今回お話したい内容になります。自分で言うのは恥ずかしいですが、私は比較的アイデアマンです。ブレスト形式でアイデアを出すのはかなり得意です。

アイデアは玉石混交である

まず大前提としてアイデアは玉石混合である事を念頭に置いておかなければなりません。世界のトップアイデアマンであったとしても、恐らくその質は安定しません。これは人類の進化がまだ追い付いていないからかもしれないと私は考えます。

アイデアが玉石混交であるとすれば、その全てに価値を見出して新たなモノやサービスを創出するのはほぼ不可能に近いのです。ですが、現代の考え方はアイデアにアイデアを足す、「足し算」の考え方で玉石の「石」をなんとか「玉」にしようとしていると思います。これは泥沼化する可能性が高いと思います。

だから引き算をしよう

既にできあがっているカレーに生卵を乗せて、更に辛さを増すスパイスをかけて、と足し算をして味の濃いカレーを作って果たしてそれは本当に美味しいのでしょうか。この例は極端かもしれませんが、そういった事をアイデアに対しても行っている人は仕事でも趣味でも多いのではないでしょうか。

押して駄目なら引いてみる、ではありませんがここで考えられる方法として「引き算」の美学です。処女作「私が愛した人は秘密に満ちていました。」は正直この作品は足し算で作品を作りました。登場人物の数が多すぎたな、と反省しております。

まだ公開しておりませんが「突き抜ける群青に泣け。」は処女作での反省点を活かし、引き算の美学を取り入れたつもりです。登場人物それぞれに作中で明確な役割がある事を考えました。明確な役割がないモブキャラには名前を付けず、エキストラとして出演させる手法をとりました。

エキストラと名のついたキャラクターを使い分ける事で結果どうなったかと言うと、メインを張っているキャラクターが際立つようになりました。結論、引き算する事で個性を引き出したいキャラクターをしっかり引きだたせる事が出来た訳です。

プロット段階でもアイデアを引き算する

私は悔しいぐらい実現しなかった作品が1つあります。途中といっても起承転結の「承」ぐらいまでガッツリ執筆して、結果完結しなかった作品があります。自分の得意なSFというジャンルのフィールドで最大限アイデアを絞って書き進めましたが、頓挫してしまったのです。

SFというジャンルは設定やルールが全てです。少しでも矛盾した要素が入って来ると途端に面白くなくなる少々難しいジャンルです。「私が愛した人は秘密に満ちていました。」を完結させて3年の時間を費やし、やっと思いついた渾身の新作でしたが無情にも未完成のまま舞台を降りました。

そこで私は考えました。この中途半端に書き進めたアイデアを捨てる決心をしたのです。すぐそこまでゴールは見えていたように思います。もしかしたら今書けば完結させられたかもしれない。でも、その時プロットを捨て、真っ新な状態にして別の新しい作品を書く事を決意しました。

結果新作を書きあげる事ができた

結果設定1年、執筆1年程で新作を書きあげる事ができました。捨てたプロットを書いていた頃よりも短い期間で出来上がったのです。それが来年連載予定の新作、「突き抜ける群青に泣け。」という訳です。本作はTSUJIMOTO FAMILY GROUP内で満場一致で面白いという意見が出て、音声化が決まりました。

あの時もし「いや、まだいける」と思って一つ前のプロットを捨てずにしがみついていたらと思うと、少し恐ろしさすらあります。そういった意味でもアイデアは捨てていく。捨てるとその分頭の中に考えるスペースができてもっと面白いアイデアが思いつくかもしれないという訳です。

現代を生きる全ての人へ

仰々しい小見出しをつけましたが、現代人は忙しすぎる日々を送りすぎです。ほどほどを弁える事こそが大切です。画期的なアイデアが出てもそのアイデアが成就するとは限りません。一昔前ならインターネットも無ければビデオゲームもない。SNSなんていう言葉すらない時代がありました。でも、今は情報洪水に溺れ必要以上に人と繋がれてしまう。これは些か異常な世界への入り口へ立たされているのではないかと私は思います。

だからこそ、アイデアを捨てる。この勇気を持ってください。私は過激なミニマリストではありませんが、ある程度ミニマリストです。「私が愛した人は秘密に満ちていました。」は多くのリスナーがいますが、制作チームは私を含めてたったの3人です。3人で巨大なコンテンツを作る事ができた訳です。だからこそ、飽食だったり24時間明るい都市に生きる皆には余裕を持って欲しいと思っています。

謎の上から目線ですみません。でもSNSばかり見るより活字も読んでみてください。これは小説家としての願いです。デジタル本ではなく紙の文庫本で構いません。街の書店にはこれだけデジタル化が進んでいるのにも関わらず大量の紙の本が置いてあります。たまにはそういったアナログの産物に触れてみてください。

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